航空写真・衛星写真
航空写真や衛星写真の画像をトレースするのは、OSMに貢献する上でとても単純、かつパワフルな方法です。画像を参照してポイントやライン、ポリゴン情報を描くことは デジタライジング/デジタル化 と呼ばれます。この方法は、現地に赴いてその場所のデータを収集する方法である 現地調査 とは異なった扱いが行われます。
画像のデジタル化はOSM地図の骨格となる情報を形成し、その後の現地調査が容易に行えるようになります。
この章では、航空写真や衛星画像がどのような仕組みで動作しているかについて紹介します。
画像について
そもそも航空写真や衛星画像とは、上空から撮影された写真のことを指します。撮影は飛行機やヘリコプター、場合によっては風船や凧などを使って行われますが、その情報源として地球を周回する衛星からの画像が最もよく利用されます。
GPSの章でも紹介しましたが、私たちのGPS装置が緯度経度を計算することが可能なのは、地球のまわりには幾つもの衛星が周回しているおかげです。こうしたGPS衛星以外にも、地表の写真を撮影する機能を持った衛星が存在しています。撮影が行われた後、こうした写真にはGIS (マッピング) ソフトウェアを使って利用できるように操作が行われます。Bing空撮画像は、衛星から撮影した写真を利用して作成されています。
解像度
あらゆるデジタル写真はピクセルから形成されています。撮影された写真を拡大してゆくにつれて、どこかのレベルで画像がぼやけはじめ、最終的には、それぞれが異なったをもつ数千個の小さな四角形が表示されるようになります。この現象は、携帯電話のカメラ機能、デジタルカメラ、そして地球をまわる衛星からのカメラで等しくあらわれます。
解像度とは、その画像を構成するピクセル/画素の縦と横の数量をあらわしています。画素数が高ければ高いほど、その写真でより精密な色情報を表現できることになります。通常、カメラの画素数はメガピクセル単位で表現されます。記録できるメガピクセル数が大きければ大きいほど、写真の解像度は高くなります。
これは航空写真・衛星写真でも同じことが言えますが、衛星画像では解像度という言葉の意味が異なっています。航空写真・衛星写真では、写真の寸法が重要となります。この場合、ピクセル/画素とは、地表におけるその一辺の距離を指します。こうした画像では “2メートル精度の画像” などの表現が使われ、その写真を構成するピクセルが2メートル幅から成り立っていることを意味しています。1メートル精度の解像度を持つ画像はより精密ですし、50cm解像度はそれよりもさらに精密になります。地域によっても異なりますが、Bingから提供されている衛星画像は通常、2メートルよりも悪い精度で提供されており、画像に写っている対象を見分けることが難しくなっています。
解像度が高い画像であればあるほど、地図の作成は容易に行えるようになります。
ジオリファレンス
航空写真・衛星写真のピクセルはサイズ情報をもち、さらにそれぞれのピクセルでは地表の特定の位置が表現されています。以前解説したとおり、これらの写真がそうした情報を持っているのは、その写真がジオリファレンスされているからです。
GPSのポイントが緯度経度情報を持っているように、衛星写真のピクセルもそれぞれが位置情報を持っています。ただし、解像度が低い写真が地図の作成に適さないように、ジオリファレンスによって付与された位置情報の精度が悪い画像も、地図の作成には適しません。
そこで、ジオリファレンスがどのような仕組みで動作しており、それがどれだけ難しいことなのかを考えてみましょう。画像のジオリファレンスを行う場合、最初に必要なことはそれぞれのピクセルが、既知の場所のどの位置をあらわしているかを認識することです。撮影した写真が四角形であれば、写真の四隅にそれぞれの緯度経度情報を与えることで、写真全体を正しい位置に合わせることができるはずです。
しかしながら、現実はそう単純ではありません。地球は球状の物体です。カメラのレンズもまた、球状です。そして、撮影した写真は平面で、二次元の情報としてあらわされます。つまり、本来球状である地表を、平面の二次元画像として表現するには、画像の引き伸ばしや歪曲がどこかしらで必要になる、ということを意味します。例えるなら、オレンジの皮をむいて、それを四角形に引き伸ばすようなものだと思ってください。オレンジの皮は絶対に、正しい四角形にはなりません。
この問題があるために、空中から撮影された写真ですべての位置が正しく配置されることはありません。
幸いにも、頭脳明晰な先人たちの努力により、この問題を解決するためのアルゴリズムはすでに開発されています。そのため、Bingから提供されている画像は実際の位置と非常に近い位置にジオリファレンスされています。地図作成という目的からすれば、画像のズレを行う必要はあまりありません。ただし、丘陵や山岳地帯などの高低差がある場所では、画像の位置を補正する必要がある箇所があります。次の章では、この問題を解決する方法を紹介します。